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多民族共生社会という「まやかし」―移民受け入れ推進論に対し異論あり―


 我が国の人口減少問題がきっかけとなり、労働人口の不足問題についての議論が喧しい。1980年当時、30~40年後の人手不足については多くを語ることなく、「発展途上国の民生と経済に役立つために日本の労働市場を開放すべきというヒューマニズム」が唱えられ、二度の「出入国管理および難民認定法の改正」として始まった。1993年には、特定活動に「技能実習」、2008年には留学生30万人、2009年の在留資格に「技能実習」を創設、2016年の「介護」、2019年の「特定技能1号・2号」と「特定活動46号・47号」と追加された。その結果、外国人労働者を雇用している事業所数は298,790か所、外国人労働者数は1,822,725人(2022年・厚労省)となっている。
 2015年のBorjas GJ(Harvard大学)による調査では、「米国において、全労働者の16%を占める移民労働者のGDPに対する貢献分は12%を占める」と報告された。しかし、この調査に対して、福井義高(青山学院大学)は「移民流入で増加したGDPから移民の取り分を除くと、移民が自国民にもたらす経済効果はGDPの0.3%でしかない」と指摘し、「自国労働者の賃金を5%も低下させ、企業利益は12%も増加する」としている。さらに、「移民に対して提供される公的サービスの財政負担が移民の納税額を上回る」としている。すなわち、移民政策は社会の途上国化による生産性の低下、公的サービスの財政負担増を考慮すれば、経済成長への効果はむしろマイナスの可能性が高い。移民推進は、日本の経済成長に貢献しないどころか、総合的にはマイナスの経済効果しかなく、労働者と経営者との格差を拡大させる可能性も高くなる結果にはならないだろうか。また、日本人の若い世代の労働者の給与レベルの低下は、結婚の躊躇をもたらし、さらなる少子化への流れを加速しかねない。